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活動報告

2025.09.17

イボキサゴ親子採取会

木更津の海辺でイボキサゴを採取し、縄文人と海の食文化を体験 イボキサゴ親子採取会を開催!

2025年7月26日(土) 【場所】千葉県木更津市金田みたて海岸潮干狩り場

海と触れ合いながら縄文時代の暮らしや食文化を親子で学ぶ「加曽利貝塚と縄文鍋から学ぶ、海の恵み(海と日本2025)」の一環で、イボキサゴ親子採取会が7月26日、木更津市の金田みたて海岸で開かれた。

注目は小さな巻貝イボキサゴ。夏空の下、親子は次々と砂の中からイボキサゴを掘り出すと、その後はイボキサゴ出汁で山海の食材を煮込んだ「縄文鍋」を試食し、〝縄文の味〟を体験。

また、ボランティアが用意したイボキサゴの貝殻を使ったゲームや装飾品づくりで遊ぶなど、終日、海の恵みと縄文文化を楽しんだ。

イベント概要

  • 千葉市の親子を中心に、イボキサゴの採取を通じて、縄文時代の食文化を体験
  • 2025年7月26日(土)午前10時〜午後3時
  • 開催場所 千葉県木更津市金田みたて海岸潮干狩り場
  • 参加人数 79人
  • 千葉日報社、加曾利貝塚博物館友の会、加曽利貝塚土器づくり同好会、加曾利貝塚ガイドの会、ときめき俱楽部、千葉市文化財課、JOMONアカデミア 他

縄文文化知る鍵 イボキサゴ

「イボキサゴ親子採取会」は、加曽利貝塚の研究成果を活かして、イボキサゴの採取体験と、「縄文鍋料理」の試食体験を通じて、千葉の海の恵みの豊かさを親子で知ってもらうことが目的。

さらに、地域遺産と和食文化のつながりや、地域観光の活性化、千葉市民の千葉都市アイデンティティ醸成への貢献も目指す取り組みだ。

主催は、一般社団法人日本教育文化スポーツ振興協会。日本財団などオールジャパンで推進する「海と日本プロジェクト」の一環。千葉日報社の協力、千葉市、千葉市教育委員会の後援を得た。

採取会当日は、県内各地から小学校4~6年生までの児童を含む28組79人の親子が、早朝からバスや自家用車で木更津市盤津干潟の金田みたて海岸潮干狩り場に集結した。

同日の天候は快晴。午前11時で気温31・5度、湿度77㌫の炎天下ながら、時折涼しさの混じる海風が心地よい。親子はスタッフの先導で、沖合2㌔の採取場所まで移動。
到着後、地元・木更津の漁師らの指導も受けながら、干潟の中にザルを差し入れ、色とりどりのイボキサゴを夢中になって拾い集めた。

イボキサゴという貝について、前千葉市埋蔵文化財調査センター所長の西野雅人さんは、「木更津の海でたくさん採れるが、売られていない貝。知らない人が大半だろう」。
直径2㌢前後の小さな巻貝で、身も少ないが、「食べてみたら、とてもおいしい。縄文人の気持ちが少しわかった気がする」と話す。

今から約5000年前、そのイボキサゴとハマグリを採りに、縄文人は毎日のように海に出かけたという。その結果、捨てた貝殻で集落の周りは貝殻だらけになった。加曽利貝塚は国内でも最大級の貝塚として知られるが、その貝層にはハマグリやアサリなどを抑え、見つかる貝殻の9割がイボキサゴだという。

「東京湾の干潟でイボキサゴが採れるのはここだけ。全国的にも稀で貴重な自然遺産」と西野さん。「小さなイボキサゴが巨大な貝塚をつくり、豊かな文化をつくったのはなぜか。きょうの体験を通じて考えよう」と話した。

縄文時代の食鍋であじわう

初のイボキサゴの採取体験の後、親子を待っていたのは「縄文鍋」の試食会。縄文鍋は、イボキサゴの出汁で山海の食材を煮た鍋料理だ。

加曽利貝塚から大量に発掘されるイボキサゴを、縄文人はどのように食生活の中で活用していたのか。その〝謎〟に西野さんが出した一つの答えが縄文鍋という。

採取会に参加したボランティアスタッフのうち、約10人が調理担当。ドングリ研究家の木下裕美さんの指導の下、事前に採っておいたイボキサゴ10㌔に水10㍑を入れて煮だし、出汁をとる。

鍋にする食材はまさに海、山のさまざまな食材。メインはイノシシ肉。それに魚介がクロダイ、スズキ、コチ、マイワシ。マイワシはドングリの粉で団子にしたつみれ。アラを使い出汁もとる。イボキサゴと魚のダブルスープだ。

植物系の食材は、サトイモ、ゴボウに山菜、各種のキノコ。それぞれの食材を別々に煮込み、ひとつの器に合わせ、シソ、ミョウガを乗せれば絶品鍋の完成だ。

澄んだスープは淡いシジミ出汁のような味わい。濃厚な出汁が舌にまといつく。イノシシ肉も野性的だ。食後のデザートにはイボキサゴの出汁が入ったみたらし団子も出た。

縄文鍋のアンケートでは、児童たちから「おいしい」の回答が想定以上に多く、調理に汗だくのスタッフを喜ばせた。

縄文体験で進む理解

採取会終了後に配布したアンケートでも、子どもたちがイボキサゴや縄文人の生活に関心を抱いた様子がうかがえた。

イボキサゴについては「色がきれい」「かわいい」。初体験の縄文鍋では回答の半数が「おいしい」「素材のうまみが出ていた」と現代のグルメっ子らしいコメントぶり。
「人と海のつながり」の理解への設問にも、「少し」も含め半数が「わかった」。
海の恵みと縄文人について理解が進んだ様子で、「もっと知りたい」の回答が相次いだ。

さらに、ボランティアによる関連イベントも「良かった」「また参加したい」が多く、楽しんだ様子だった。西野雅人さんは「干潟の先端まで歩いて大変だったと思うが、千葉の海の豊かさ、大切さを実感したと思う」と参加親子をねぎらった。

イボキサゴと縄文人の関わりについて、「加曽利の縄文人は舟で来て、積んで持ち帰っていた」と当時の運搬方法も説明しながらも、「縄文人がなぜたくさんのイボキサゴを内陸のムラに運んだのか、まだわかっていない」とイボキサゴの〝謎〟も指摘。
参加の親子には、「次に、加曽利貝塚へ行くと見方が変わるはず。これがあのイボキサゴだと。今までとは違った印象を持つと思う」と述べ、加曽利貝塚への訪問に期待を述べた。

縄文協力してくれた加曽利貝塚関係団体・個人

イボキサゴ採取会では、加曽利貝塚で活動する団体などから約60人のボランティアが参加・協力した。萩原博・加曽利貝塚博物館友の会理事長は、「ボランティアの方々は皆、加曽利貝塚が大好きな人たち。親子の皆さんもきょうの体験をきっかけに、縄文時代に関心を持ち、加曽利貝塚にも来てほしい」と呼びかけた。

参加したボランティア団体・個人は次の通り(氏名敬称略)

▽加曽利貝塚博物館友の会
▽加曽利貝塚ガイドの会
▽加曽利貝塚土器づくり同好会
▽ときめき倶楽部
▽縄文太鼓いにしえ・松本ちはや他
▽加曽利JОМОNアカデミア
▽縄文グルメ推進委員会
▽ドングリ研究家・木下裕美
▽木更津漁協・石川金衛
▽漁師工房・原田祐介
▽千葉大学、千葉県、千葉市、同市教委、同市埋蔵文化財調査センター有志

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